2021年の「みやざき地頭鶏の日(2月10日)」に発売した47都道府ケンミンプロジェクト第2弾「宮崎ケンミン焼ビーフン」。高村が「第2弾にしてこんなに完成度が高いものができてしまった」という「焼ビーフン×(地頭鶏(じとっこ)+ピーマン+ゆず胡椒)」の方程式について、商品開発担当・新田と試食を囲んで語りました。
文:大森ちはる(なりわいカンパニー)
写真:西川遥香(ケンミン食品)
信頼とか愛とか。地頭鶏はその具体なのかもしれない
新田: 「宮崎ケンミン焼ビーフン」の開発過程で、MRT宮崎放送さんの番組『つづくさんのどようだよ(^^)』に出演させてもらったじゃないですか。僕、あの番組で地頭鶏生産者の細川さんにお会いできたことが今でもすごく心に残っていて。
高村: 細川さんが地頭鶏に接する姿に感銘を受けました。一番感動したのが、地頭鶏を育てはじめたときの話。
新田: 納入先の料理人さんに「おいしいんですけど、愛情が入ってないね」と言われてしまったという。
高村: その経験を原点に、どうすれば鶏たちに愛情を伝えられるかと試行錯誤された姿勢に心を打たれた。それまで地頭鶏の養鶏ルールどおりに1平米あたり2羽で育てていたのを1羽にしたり……それは数値化できる行動ですけど、餌や育て方にはじまり、接し方をまるごと変えられたんだと思うんです。
新田: 代々みかん農家だった細川さんが、もともとはみかんの雑草を食べてもらうために飼いはじめた地頭鶏をどんどんと愛情の対象に。
高村: 鶏は出荷するときに器具で脚をひっかけて捕まえていくのが一般的だそうだけど、細川さんの息子さんは鶏の隣に行ってスッと持ち上げるというのもね、信頼の証だなと。きっと地頭鶏たちも、出荷されるのがわかっているだろうに。それだけ愛情をもって育てて、ストレスのない信頼関係を築いていらっしゃった姿に、背筋を正された。
新田: 今回、地頭鶏を使わせていただくにあたって、焼き方というのも、地頭鶏のおいしさを引き出す重要な要素なんだと知りました。しっかりした歯ごたえがありつつ、中がレアというか柔らかい状態で、噛んでいる間に旨みが口に広がる……地頭鶏をざっくりざっくり混ぜながら網焼きしていくのは熟練の技で、だから地元以外ではほとんど食べられないんだと合点しましたね。
高村: 地頭鶏の脂を炭に落として炎をたたせて、いぶした香り、炭の風味をつけている。「宮崎ケンミン焼ビーフン」は、宮崎で炭焼きしてもらった地頭鶏を兵庫県内の当社の工場でビーフンと合わせてるんだけど、炭焼き後にある程度肉汁が切られているはずにもかかわらず、ビーフンにしっかりと地頭鶏の脂の旨味がなじんでいるのが、すごい。
新田: せっかくの炭の風味をかき消したくなかったので、シンプルな塩味をベースに、アクセントとしてピーマンのほろ苦さとゆず胡椒を効かせる味つけにしました。
願わくば、あの地頭鶏の鉄板にビーフンを入れて食べたい
新田: 宮崎の料理屋さんでは炭焼きした地頭鶏が鉄板のお皿で出されることが多いんですけど、そういえば社長、番組の中で「鉄板の皿の中に、ゆでたビーフンをぶちこんで食べたい」って言っていませんでした?
高村: 言いました。(笑) 今だって、願わくばそうして食べたい。出される鉄板の中に、地頭鶏の肉汁が溜まっているでしょう。ビーフンは食材の旨味を吸っていくめんだから、あの肉汁を余すことなく吸わせて、それを口にかきこむことを想像しただけで、お腹がすいてくる。僭越ながら、あたらしい宮崎のソウルフードになれるんちゃうかな。(笑)
新田: おかげさまで好評をいただいて、「宮崎ケンミン焼ビーフン」を4月に再販売できました。これからも宮崎のビタミンピーマンが旬を迎えるごとに再販していけたら、「ビーフンと地頭鶏の掛け合わせ、イケるなぁ」って口コミが広がって、その願望もいつか現実化するかもしれませんね。
高村: そうそう、宮崎のピーマンって冬が旬なんですよ。「なんですよ」って、僕も「宮崎ケンミン焼ビーフン」で宮崎を訪れるまで知らなかったんだけど。宮崎県はいろいろ冬に旬を迎える農産物が多いらしいね。
新田: 宮崎では、きゅうりも冬が旬だそうですよ。「地頭鶏+ピーマン+ゆず胡椒」に行き着く前の段階では、きゅうりを使ったレシピも考えました。「棒棒鶏の冷製ビーフン ~へべす風味~」として当社ホームページでレシピ公開しています。あとは、冬といえば柑橘類ということで、きんかんが主役のレシピも「佐土原茄子と きんかんたまたま のトマト煮込み風ビーフン」も考えました。
高村: ほんとうに、各地の食文化と生産者さんの気骨に触れられるプロジェクトだね。「47都道府ケンミンプロジェクト」は。そして、「これをビーフンと絡めたい…!」という欲望に駆られる。(笑) これからどんな食材に出会えるか、とても楽しみです。